コロナによる就労移行支援の変化や実態を解説

新型コロナウィルスは、日常生活を含む社会システム全体に大きな変化をもたらしています。そんな中、障害者雇用においてはどんな影響があったでしょうか?

ここでは、就労移行支援で導入されるようになった「在宅訓練」について説明するとともに、障害者雇用状況や今後の見通しについても触れています。

後半では就労移行支援の利用を検討している方のために、各地の就労移行支援事業所を紹介していますので参考にしてください。

就労移行支援は在宅でも受けられるようになった

就労移行支援とは、65歳未満の障害者を対象に、就職に必要な職業訓練を実施し、ハローワークなどと連携して求人開拓を行い、就職できたら職場定着まで一貫して支援する福祉サービスです。

利用者は就労移行支援事業所に一定期間通って訓練を受けるのが原則ですが、令和2年度に新型コロナ感染症への対策として在宅でも受けられるように利用要件が改訂されました。その時点では臨時の措置でしたが、令和3年4月以降は常時の取り扱いとなりました。

在宅訓練の利用対象者は?

これまで在宅訓練を受けられるのは通所が困難な身体障害や知的障害、精神障害のある方に限られていましたが、改訂後は「在宅での訓練を希望する者であって、在宅でのサービス利用による支援効果が認められると市町村が判断した利用者」と変更されました。

本人がいくら希望しても、時間通りに服薬できない、自分の障害を理解できていない、作業意欲がない、感情のコントロールができないといった方は対象外とみなされます。このような方こそ、通所で訓練・支援を受けるほうが大きな効果を上げることができるからです。

なお、通所訓練と在宅訓練を組み合わせて利用することも可能となっています。

就労移行支援事業所の利用期間と料金は?

就労移行支援事業所の利用期間は原則2年、就職後の定着支援期間は原則6か月と定められています。

料金は国が9割負担、残り1割が自己負担となっていますが、本人負担分は前年度の収入によるので、ほとんどの方が無料で利用しています。

就労移行支援事業所には原則として働きながら通うことはできません。自治体によってはアルバイトを認めるところもあります。

事業所によっては交通費や昼食代など費用の一部を補助するところもあります。詳細は自治体の障害福祉課に問い合わせてみましょう。

ちなみに、就労移行支援事業所は就労継続支援A型・B型事業所とは違い、作業をしても報酬(工賃)が支給されることはありません。

在宅ではどんな訓練やサービスが受けられる?

在宅訓練であっても「職業訓練→求人開拓・就活支援→職場定着支援」という3つのプロセスは変わりません。在宅と通所の違いは、在宅はパソコンとインターネット環境、電話を用いて行われる点です。

訓練内容は、生活管理、ビジネスマナー、パソコントレーニングが中心になります。具体的なカリキュラムは就労移行支援事業所によって異なり、IT系への就労に力を入れている事業所では、webデザイン、DTP、デジタルイラストなども学ぶことができます。

コロナ禍で障害者の雇用率が上昇している

コロナ禍で障害者の雇用率が上昇している

新型コロナウィルスは経済や雇用に多大な影響をもたらしました。障害者雇用においても、解雇や雇い止めに遭うケースが多く見られます。

一方、企業の中には積極的に障害者を雇用しているところもあります。下表は厚生労働省が公表している「障害者雇用状況」の直近3年間の集計結果ですが、毎年雇用者数が増加し、2022年度は過去最高を更新しています。

【民間企業における障害者雇用状況の集計結果】

年度 2020年(雇用率2.2%) 2021年(雇用率2.2%) 2022年(雇用率2.3%)
雇用者数 560,608.5人 578,292.0人 597,786.0人
対前年比 25,839.0人増加 17,683.5人増加 19,494.0人増加

コロナ禍にあって障害者雇用に貢献しているのは、リモートワークの体制が整っているIT・情報関連企業や、職場に出勤しなければならないがフレックスタイム制や時短勤務で対応できる業務(電話応対などのバックオフィスや清掃など)の企業でした。

もともとリモートワークができない営業職やサービス業は、感染予防に万全を期して通常の営業を続けていたため、障害者雇用数にもあまり変化はありません。

障害者雇用に関しては各企業の意識が変化しており、これまで以上に活発に障害者雇用をすすめる企業が増加すると見られています。

就労移行支援事業所の利用者も増えている

就労移行支援事業所では、就職しても長続きしない、人間関係がうまくいかない、自分にはどんな仕事が合うかわからないなどの悩みを抱えている人が、訓練を通して自己管理能力やコミュニケーション能力を身につけていきます。

一般企業への就職が難しい時だからこそ、「就労移行支援事業所できちんとトレーニングを受けて就活に臨みたい」という方や、withコロナを見据えて「在宅でリモートワークできるスキルを身につけたい」という方が増えています。

就職率・定着率の高いおすすめの就労移行支援事業所★特徴とエリア一覧

就職率・定着率の高いおすすめの就労移行支援事業所★特徴とエリア一覧

就労移行支援事業所は現在、全国に約3,000か所あります。ここではその中でも就職率・定着率共に高い就労移行支援事業所を紹介します。

なお、在宅訓練については、現段階では 導入していることを公表していない就労移行支援事業所が多いため、在宅訓練を希望する場合は利用したい事業所に直接お問合わせください。

就労移行支援事業所 チャレンジ・ド・アソウ

特徴:修了生の45%は一般事務や経理事務、医療事務などで活躍中。グループ会社での実習によって仕事に自信を持てるようになる点が強みです。

所在地:福岡、博多、広島、広島駅前、大阪、新大阪、天王寺、名古屋駅前

就労移行支援事業所 ウェルビー(welbe)

特徴:企業(雇用主)が最重視する「コミュニケーション力」を高めるためのトレーニングに力を入れています。

所在地:札幌、仙台、郡山、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、富山、石川、長野、静岡、愛知、三重、京都、大阪、兵庫、和歌山、滋賀、岡山、広島、愛媛、香川、福岡、熊本、長崎、鹿児島

就労移行支援事業所 リタリコ(Litalico)

特徴:全国展開するリタリコは、豊富な情報網を活かし、個々人に合わせた支援計画を提案します。

所在地:札幌、仙台、栃木、埼玉、東京、千葉、神奈川、愛知、静岡、兵庫、京都、大阪、岡山、広島、福岡、宮崎、沖縄

就労移行支援事業所 ミラトレ(MIRAI-TRAINING)

特徴:実際の職場を模した事業所でトレーニングを積むことで、働く自信をつけていきます。

所在地:東京、埼玉、千葉、神奈川、愛知、大阪、兵庫

就労移行支援事業所 ココルポート(cocorport)

特徴:精神障害、発達障害の方が半数以上を占め、支援は「働くことに体を慣らすこと」から始めます。

所在地:東京、埼玉、千葉、神奈川、愛知、兵庫、大阪、福岡

就労移行支援事業所 ホワイト

特徴:パソコンスキルに特化した事業所。月1回通所できる方に限り在宅訓練が可能です。

所在地:福岡(天神)

就労移行支援事業所 マナビト

特徴: ITやwebの知識ゼロでも、デザイナー、プログラマー、エンジニアとして活躍できるだけのスキルを習得できます。

所在地:東京(渋谷)

就労移行支援事業所 CONNECT大阪梅田

特徴:①健康管理 ②日常生活 ③対人スキル ④ルール・規律 ⑤作業能力 ⑥就職準備の6段階をピラミッドに見立て、2年間でピラミッドの完成を目指します。

所在地:大阪

就労移行支援事業所 ミライエ

特徴:統合失調症やうつ病など精神障害の方が多く利用しています。臨床心理士によるカウンセリングを1回40分無料で受けることが可能。

所在地:大阪、横浜(関内・鶴見)、名古屋

就労移行支援事業所 リンクス (Lincs)

特徴:「それぞれ障害も違えばスキルも違う」と考え、カリキュラムは一人ひとりに合わせて作成。通所日も当初は週5日や3日などバラバラです。

所在地:埼玉、千葉

就労移行支援事業所 manaby

特徴:習得できるのはデザイン・Web制作・プログラミング・事務系のスキルで、在宅訓練にも対応しています。

所在地:宮城、福島、埼玉、茨城、東京、千葉、神奈川、大阪、兵庫

就労移行支援 ロード

特徴:利用者の希望に応じてパソコン検定や介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)などの資格取得のサポートをします。

所在地:愛知(名古屋市)

就労移行支援事業所 つばさ

特徴:資格取得に向けて個別にサポートします。就活に欠かせない自己分析や書類作成、面接の練習にも十分時間をかけています。

所在地:兵庫県神戸市

就労移行支援事業所 ラシエ(LASIE)

特徴:福祉事業所とは思えないカフェのような雰囲気で、そのうえ体験利用中でもランチを無料提供しています。

所在地:埼玉(所沢市)

就労移行支援事業所 グディ

特徴:精神障害、発達障害、知的障害者を対象とし、自己肯定感を高めるトレーニングを行います。長期休職者の復職もサポート。

所在地:東京(世田谷)

就労移行支援事業所 Pinto(ピント)

特徴:事業所内の模擬会社を通して会社の仕組みを知り、コミュニケーション力を高め、ビジネスマナーを身につけていきます。

所在地:千葉(流山市)

就労移行支援事業所パッソ(Passo)

特徴:地域密着型で、地元企業100社以上に就職しています。幅広いスキル向上のため、商品の企画・製作・販売にも取り組んでいます。

所在地:愛知、岐阜

障害者就労支援センター ドリーム(DREAM)

特徴:福祉分野に強く、修了生はデイケアの介護職員や病院での看護補助、清掃職などに就くケースが多く見られます。

所在地:新潟市

就労移行支援事業所 Roots(ルーツ)

特徴:うつ、統合失調症、発達障害のある方を対象に、パソコンスキルだけでなく理想実現に必要なスキルの習得から就職・定着まで支援します。

所在地:東京(四ツ谷、八王子)

就労移行支援事業所 ピアジョブサポート

特徴:横浜関内の事業所ならオフィス街を通るため、職場に通う自分をイメージすることができ、それがモチベーション維持につながります。

所在地:神奈川(横浜、川崎)

就労移行支援事業所ノア(noix)

特徴:就職に向けた基本的なスキルだけでなく、実践的・専門的なスキル習得を目指します。ノアは在宅訓練にも対応しています。

所在地:埼玉(さいたま市)

まとめ

就労移行支援事業所を紹介しましたが、選び方が重要です。入所したその後、通うのが負担になるようでは意味ないので、事前の見学は必須です。実際に足を運んで、事業所の雰囲気やスタッフの応対の仕方、利用者の様子も見て、ここなら無理なく通えると思えるところに決めるようにしましょう。

おすすめとしては、事業所所在地が限定されますが、チャレジンドアソウです。

人材会社グループの就労移行支援事業所なので、企業と豊富なネットワークがあります。

最寄にお住まいの人は検討してみる価値がありです。

https://challenged.ahc-net.co.jp/